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耐震化の助成金を利用したマンションやビルの「建替」「改修」について

2023.04.27 UP

東京都防災会議「東京都の新たな被害想定」(令和4年5月公表)において、都心南部直下地震による建物被害は、194,431棟が全壊すると想定されています。

建物の崩壊により、緊急車両が通行できず、人命救助が遅れることは避けなければなりません。そこで、東京都では耐震化を進めるべく、一定の要件を満たす建物に対して費用の一部を助成しています。 そこでこの記事では、助成制度を有効活用してもらうために、耐震化促進事業の助成制度について解説します。

「耐震化促進事業に係る助成制度」とは?

震災発生時に建物が崩壊すると、緊急車両が通行する道路が使えなくなる可能性があります。

これを防ぐために、東京都が「耐震化促進事業に係る助成制度」で「緊急輸送道路」を指定し、各区市町村が耐震診断や耐震改修などで必要な費用の一部を助成する制度を設けています。

緊急輸送道路には「特定」と「一般」があり、高速道路や環状七号線、甲州街道などの重要な道路については、特に「特定緊急輸送道路」として耐震化が急がれています。 「所有する土地や建物が道路に面しているか」については、東京都耐震ポータルサイトの地図で確認できます。

※出典:東京都耐震ポータルサイト「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化」

緊急輸送道路沿いの不動産を所有している場合

緊急輸送道路沿いの不動産のうち、一定の要件を満たす不動産については、耐震化報告や耐震診断を義務づける一方、費用の一部が助成されます。次の要件をすべて満たす建物が対象です。

<対象となる建物>

1 緊急輸送道路沿道の建物

2 昭和56年5月31日以前に建築されたもの

 ※国・地方公共団体が所有する旧耐震基準で建築された建物は除く

3 緊急輸送道路の道路幅員のおおむね2分の1を超える高さのもの(下記参照)

たとえば前面道路幅員が14mの緊急輸送道路に接している場合、建物の高さが7mを超えると対象となります。また前面道路幅員が10mの場合は、対象となる建物の高さは6m超です。

<建物所有者に義務づけられている内容>

特定緊急輸送道路義務耐震診断を実施し、その結果を知事に報告しなければならない。
義務耐震診断を実施し、その結果を所管行政庁に報告しなければならない。
努力義務耐震診断の結果、地震に対する安全性の基準に適合しない場合、耐震改修等を実施するよう努めなければならない。
努力義務占有者に対し、地震に対する安全性の基準に適合しない旨を通知するよう努めなければならない。
努力義務占有者に対し、耐震改修等の実現に向けた協力を求めるよう努めなければならない。
一般緊急輸送道路努力義務耐震診断の結果、地震に対する安全性の基準に適合しない場合、耐震改修等を実施するよう努めなければならない。
※出典:東京都「東京都耐震改修促進計画」

耐震診断を行わなければ、建物の名称が公表されたり、罰金・過料が科せられたりすることがありますので、注意が必要です。

耐震化助成制度の概要・補助率

前述のとおり、緊急輸送道路沿道にある建物で、高さなどの要件を満たす場合、耐震診断などが義務づけられています。一方で、区市町村単位で助成制度を設けています。

助成の要件・内容や補助率は自治体によって異なります。助成の対象となる項目は次のとおりです。

補強設計建替設計改修建替除却診断
特定緊急輸送道路助成
一般緊急輸送道助成
※「〇」:ほぼすべての自治体で助成 「△」:自治体によってばらつきあり 「-」:対象外
  • 補強設計:耐震診断により耐震化を図る必要があり、そのための計画を立てること。耐震改修工事に必要な設計図や仕様書を作成する。
  • 建替設計:耐震診断により耐震化を図る必要があり、建替工事に必要な設計図や仕様書を作成する。
  • 改修:建替設計に基づいて行う改修工事
  • 建替:建替設計に基づいて行う建替工事
  • 除却:倒壊の恐れがある建物を取り壊すこと ・診断:地震に対する安全性を評価すること。

このように、特定緊急輸送道路沿いにある建物であっても、自治体によって対象となる助成内容は異なります。特に「建替設計」と「診断」を助成の対象に含めるかどうかについてばらつきがみられます。

耐震化助成制度「建替」のおもな補助率

23区の多くで適用されている「建替」の補助率は、

  • 5000㎡以内 費用×1/3(または11/30)
  • 5000㎡超 費用×1/6(または11/60)

です。たとえば助成対象事業費を1億円とすると、3千3333.3万円の補助を受けられます。建替等は努力義務ですが、大地震が起きた場合に倒壊してしまうリスクがあり、助成金を受けられるうちに活用したほうが総合的な負担をおさえられます。

「建替」と「改修」のどちらを選ぶか

耐震診断の結果、倒壊の恐れありとされた場合、「建替」か「改修」のどちらかで悩むかもしれません。修繕や改修だけで安全性を確保できない場合は「建替」と判断できますが、修繕や改修でも十分に安全性を確保できる場合は、「建替」と「改修」を総合的に判断しなければなりません。

総合的に判断するためには、工事内容を精査し、費用を算出しなければなりません。また、この費用をもとに助成金額を確認します。今回紹介した助成金制度は耐震化を対象としていますが、不動産の活用を検討する際には建物の収益性や税制なども考慮する必要があります。

このように考えると複雑に感じるかもしれませんが、弊社は不動産の総合コンサルを得意としており、不動産活用で必要な調査や企画、設計などを一括でお手伝いさせていただきます。 助成制度は予算額に達すると受付終了になりますので、判断が難しいと感じている方はぜひ、お気軽にご相談ください。