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建築のにおける「緑化義務」とは?渋谷区・豊島区の取り組みを事例に解説します

2024.03.19 UP

【監修:鈴与三和建物株式会社 設計部 田中弘純】

このように建物を新たに建築増改築する時、計画に積極的に緑を取り込んで欲しいという考えから「緑化の義務」があります。

参考:建築基準法 第二条二 特殊建築物

建築計画においては基本プランを平面図や立面図をイメージしてスタートしますが、その設計で重要なウェートを占めるのが「緑化義務」です。あまり目立つ部分ではありませんが、設計士にとって緑化義務を満たす為の検討は時間を要する作業の一つです。

法律や条例で定められる緑化義務。
都市部において緑が増える取り組みについて、目的や内容を確認しましょう。

法律・条例で定められる「緑化義務」とは?

はじめに緑化義務は、法律や条例ではどのように取り扱われているのか、実際の条文を確認します。

都市緑地法における緑化義務

国土交通省が所管する都市緑地法では、第34条で以下のように緑化地域制度が定められています。

良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し、建築物の敷地内において緑化を推進する必要がある区域については、都市計画に、緑化地域を定めることができる。

参考:都市緑地法 第三十四条 緑化地域に関する都市計画

市区町村の条例における緑化義務

たとえば、渋谷区では「緑化計画の届出等」という条例が定められています。

参考:渋谷区 緑化計画の届出等

後ほど解説する基準に当てはまる場合、工事に先んじて緑化計画の届出を提出しなければいけません。

「緑化義務」の目的・内容とは?

緑化義務の目的とは?

緑化義務について東京都環境局では、以下のように目的が記載されています。

緑化は失われた自然の回復のはじまりです。

都市の中に美しい景観を形成し、うるおいとやすらぎのある快適なまちづくりに重要な役割を果たしています。
また、ヒートアイランド現象の緩和、大気の浄化、雨水の浸透など、都市生活の面において多様な役割を担っています。

このため、今ある緑を守り育て、失われた緑を少しでも多く回復していくことが必要です。

引用:東京都環境局 緑化計画書制度

つまり、都市内部での緑地面積を増やすことで、景観だけでなく、夏場の暑さの緩和など、都市内部における住環境の向上も目指しているということです。

緑化義務の内容

より具体的に緑化義務の内容を見てみましょう。

市町村や区によって条例の内容が異なりますので、本記事では屋上緑化を最初に始めた渋谷区を例に解説します。

渋谷区では、敷地面積300㎡以上の土地に建築物を新築、増改築する場合を対象に、緑化計画書の届け出を義務付けています。

具体的な緑化義務の内容 (1)敷地・建物の一定割合の緑化

この場合に、敷地面積から建築面積を差し引いた値の2割を、さらに建築面積の2割を緑化する必要があります。

敷地面積から建築面積を差し引いた面積の2割と、建築面積の2割を緑化することは設計上難しい場合もあり、壁面緑化やフェンス・ベランダ部分の緑化なども含めて求められる面積を満たすよう設計を行います。

緑化面積の算定に含まれる壁面緑化の事例

また、地上と屋上の緑化面積は相互に振り替えが可能であるなどの細かな緩和規定や、実際に植える樹種の選定など、決める必要がある事柄は多岐に渡ります。

これらを踏まえ、都内など都市部で建築を行う場合は、経験豊富な業者に依頼することをお勧めします。

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自治体によっては接道部の緑化義務も

緑化義務について、より厳しい基準を設ける自治体もあります。

豊島区では、接道部の緑化について規定が定められています。これは建築計画をしている敷地(土地)が道路と接している長さに対する一定の割合を緑化して下さいというものです。

参考:豊島区 みどりの条例に基づく緑化計画

たとえば敷地面積1,000㎡未満のマンションを建築する場合、敷地の接道部の長さの6割を緑化しなければいけません。

具体的な緑化義務の内容 (2)接道部の一定割合の緑化

接道部の緑化は、建物の出入口や外構計画に関係することから、計画の初期段階から検討が求められます。

緑化義務の申請

緑化義務は、着工前に申請書を提出する必要があります。

しかし、敷地・建築面積の2割を緑化したり、接道部分の一定割合を緑化したりする必要があることから、実務的には「事前協議」という形で計画の初期段階から自治体と協議しなければいけません

また、敷地や屋上の緑化は、建築計画を立案する設計者として、単に植物を植えればよい訳ではなく、お施主様が好む植物は何か、地域や建築予定建物と調和する植物は何か、といったことも合わせて詳細な検討を行います。

敷地内で緑化義務の面積基準を満たせない場合は壁面緑化を利用するなど、細かな基準を適用しながら緑化義務を満たすケースもありますので、計画の初期段階からお施主様・自治体・建設業者との間で複数回の協議が求められます。

緑化義務で重要な「維持・管理」

緑化義務で重要な「維持管理」

なお、緑化義務は計画・施工で完了する訳ではありません。

マンションやビルなどの建築工事自体は工期1~2年ほど(大規模な開発などの場合は更に多くに日数を要します)で完成しますが、賃貸経営はその後数十年に渡って行われます。

緑化した場所に植えた植物は生きています。水やり、枝葉の剪定、落ち葉の掃除、害虫対策など日々のメンテナンス管理が必要となります。緑化部分が小規模な場合は、建物所有者が、ご自身でこれらの管理を行う事もありますが、大型の建物になれば建物管理会社に依頼するのが一般的です。

委託された管理会社は、害虫駆除や剪定などを行います。しかし、委託する場合は費用が発生します。これらの費用は賃貸経営の上で経費として計上できますが、実態としては支出です。

建築計画の時点で植栽管理の費用を含めた建物管理費用を把握しておくことをお勧め致します。

適切な維持管理を行うことで、植栽によるトラブルを未然に防ぐとともに、優れた景観づくりから建物の魅力を向上させることにもつながります。

設計・建築に加えて、植栽も含めたメンテナンスも配慮した計画作りが重要といえるでしょう。

まとめ

東京都を中心とする都市部で規制を受けることのある「緑化義務」について解説しました。

自治体が定めた基準を超える建物を建てる場合、敷地や屋上の一部を緑化する義務が生じる緑化についての条例は、建物の配置や外構計画に大きな影響を及ぼすことから、十分な理解と配慮が必要です。

また、緑化義務は基準を満たす植栽を施して完了する訳ではなく、それから先、数十年に渡って維持管理を行う必要がある為、メンテナンスも含めた計画が重要です。

緑化義務を満たす設計についても維持管理についても、都市部での豊富な設計・管理業務の経験が重要です。

弊社、鈴与三和建物株式会社は90年近い歴史の中で、設計・施工に加えて植栽管理も含めた賃貸経営についても数多くの経験がございます。

東京都を中心とした都市部で、マンション経営など土地活用を検討されている方は、鈴与三和建物株式会社までお気軽にご相談ください。

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