修繕工事における足場・ゴンドラ・ブランコ工法の特徴と選び方― 費用・工期・安全性の違いを比較 ―
2026.01.20 UP
Contents
― 工法の違いで変わる「費用・工期・安全性」 ―
はじめに|修繕工事の費用は「工法」で大きく変わる
大規模修繕工事を検討する際、多くの方が気にされるのは「どこを直すか」「いくらかかるか」ではないでしょうか。
しかし、実際の修繕費用や施工効率を大きく左右する要素として、どの工法を採用するか(足場・ゴンドラ・ブランコ)があることは、意外と知られていません。
大規模修繕工事において、どの工法を選択するかは単なる作業手段の決定に留まりません。
同じ外壁補修であっても、採用する工法(足場・ゴンドラ・ブランコ)によって、工事の基本に関わる以下の要素が変化するためです 。
予算を左右する「仮設費用」:足場の組み立てにかかるコストから、ロープアクセス(ブランコ工法)のように、足場を組まず、屋上や上部から機材を設置するだけで済む工法の場合、仮設費用を大幅に抑えられるケースもあります。
完了時期を見極める「工期」:準備や撤去に時間を要する工法もあれば、即座に着手・完了できる工法もあり、全体のスケジュールに直結します 。
生活の質を守る「入居者への影響」:窓の外の視線や日当たり、洗濯物の外干し制限など、居住者のストレス強度を左右します 。
現場の要となる「安全面のリスク」:作業床の安定性や、不審者の侵入経路となり得る防犯上のリスク管理のあり方が大きく変わります 。
このように、工法の違いは「費用・工期・生活環境・安全性」のすべてに影響を及ぼすため、建物の状況に合わせた慎重な選定が不可欠です 。 本コラムでは、修繕工事でよく使われる「足場工法」「ゴンドラ工法」「ブランコ工法」について、それぞれの特徴と選び方を分かりやすく解説します。
修繕工事で使われる主な3つの工法とは?
① 足場工法(枠組足場・吊り足場)
特徴
建物の外周をぐるりと囲むように足場を組み、作業床を確保して施工する、最も一般的な工法です。



メリット
・作業床(地面のような平らな足場)が安定しているため、職人が両手を使って精密な作業を行うことができ、施工品質が非常に安定します 。
・建物の全面をメッシュシートで覆うため、塗装や洗浄の際の飛散トラブルを最小限に抑えられ、外壁、防水、屋上などの一括施工に最適です 。
・一度に多くの作業員が各階で同時並行して作業できるため、大規模な建物でも効率的に工事を進めることが可能です 。
デメリット
・足場の組み立て・解体だけで大きなコストがかかるため、部分的な補修であっても仮設費用が高額になりやすい傾向があります 。
・メッシュシートと鉄骨によって日当たりや通風が悪くなり、入居者が「洗濯物を干せない」「窓を開けられない」といったストレスを感じやすくなります 。
・足場を伝って不審者が上層階へ侵入するリスクが生じるため、必要に応じて補助錠の設置や防犯センサーなどのセキュリティ対策が必要になります。
向いているケース
足場工法は、建物全体を計画的に修繕する必要がある場合に最も適した工法です。
・ 大規模修繕工事では、外壁塗装だけでなく、屋上の防水工事やベランダ床シートの張り替えなど、建物全体を総合的にメンテナンスします。
このように複数の部位へ安全かつ確実にアクセスする必要がある場合は、建物全体をカバーできる足場を設置する方法が最も効率的で、作業品質の確保にもつながります。
・タイルの剥落防止など、多数の下地補修が必要な場合
タイルの一枚一枚を叩いて診断し、確実に補修・張り替えを行うには、職人が両手を使って踏ん張れる安定した作業床が不可欠です 。
・建物形状が複雑なマンション
凹凸が多い建物や、円形のバルコニーがある建物など、上下移動のみのゴンドラやブランコでは対応しきれない複雑な形状でも、足場なら隙間なく囲い込むことができます 。
② ゴンドラ工法(仮設ゴンドラ・常設ゴンドラ)
特徴
屋上に設置した機材からゴンドラを吊り下げ、作業員が昇降しながら施工する工法です。



メリット
・地上から足場を組み上げないため、下層階の景観や日照を損なわず、入居者の圧迫感を軽減できます 。
・必要なスパン(列)だけに機材を設置するため、足場工法に比べて仮設費用を抑えつつ、足場に近い安定感で作業を行うことが可能です 。
・作業が終わればゴンドラを屋上や地上に格納できるため、夜間の防犯リスクを低く抑えられるという利点があります 。
デメリット
・風の影響を非常に受けやすく、強風時には作業が中断されるため、天候によって工期が左右されやすい不安定さがあります 。
・屋上にゴンドラを吊るための「吊り元」を設置するスペースや強度が必要であり、建物の形状(複雑な凹凸など)によっては設置不可能な場合があります 。
・横方向への移動に制限があるため、建物全体を一気に直すのではなく、スパンごとに順番に作業を進める必要があります 。
向いているケース
建物の高さや周辺環境への影響を抑えながら効率的に外壁修繕を行いたい場合に最適です。
・高層建物では、地上から足場を組み上げると下層階への荷重が大きくなるうえ、設置範囲も広くなるためコストが増大します。屋上からゴンドラを吊り下げる方式であれば、建物の高さに左右されず、安全に作業エリアを確保でき、効率的に施工を進められます。
・1階部分に大規模な足場を設置すると、店舗の営業やお客様の出入りに影響が出ることがあります。
ゴンドラを活用することで、地上の占有を最小限に抑え、景観や動線を確保しながら工事を行うことが可能です。
・「西日の当たる面だけ劣化が進んでいる」といったケースでは、足場をその面だけに組むこともできます。ただし、足場設置には地上スペースの確保や設置・解体時の安全管理が必要となり、一定の時間とコストが発生します。 ゴンドラであれば、必要な面に限定して安全に作業でき、建物周囲の占有を抑えつつ効率的に修繕を行うことができます。
③ ブランコ工法(ロープアクセス工法)
特徴
作業員がロープとハーネスを使用し、建物外壁を「ブランコ状」に下降しながら施工する工法です。



メリット
・足場や大型機材が一切不要なため、3つの工法の中で最も仮設コストを抑えることができ、予算を修繕そのものに集中させられます 。
・「タイルの浮きを1箇所だけ直したい」といったピンポイントな補修に対し、準備期間なしで迅速かつ柔軟に対応可能です 。
・隣の建物との隙間が狭い場所や、足場が組めないような超高層部でも、ロープさえ垂らせれば作業ができる高い機動性を持っています 。
デメリット
・作業員がロープに吊られた状態で作業するため、重い機材や大量の材料を扱う工事(全面的なタイル張り替えや重補修)には向きません 。
・職人の個人の技術力が品質や安全性に直結するため、信頼できる資格保持者や安全管理体制を持つ業者選びが非常に重要です 。
・常に「揺れ」がある状態での作業となるため、精度が求められるような繊細な仕上げ作業には限界があります 。
向いているケース
「スピード感」と「コストパフォーマンス」を最優先する応急処置や部分補修に最適です。
・漏水調査やタイル浮きのピンポイント補修
「雨漏り箇所をすぐ特定して直したい」「数枚のタイルが浮いているので剥落前に固定したい」といった、機動力が求められる局所的なメンテナンスに非常に有効です 。
・敷地が極めて狭く、隣の建物との隙間がない場合
都市部の建物など、隣地との境界が狭すぎて足場を立てるスペースが確保できない場所でも、上から降下するブランコなら施工可能です 。
・大規模修繕までの「つなぎ」のメンテナンス
数年後に大規模修繕を控えているが、それまでに見た目や安全性を最低限維持しておきたいという場合、仮設費用を最小限に抑えて予算を有効活用できます 。
足場・ゴンドラ・ブランコ工法|どれを選ぶべき?
工法選びで重要なのは、「建物にとって最適かどうか」という視点です。
◎・・非常に適している ○・・適している △・・条件次第で適している ×・・不向き
| 比較項目 | 足場工法 | ゴンドラ工法 | ブランコ工法 |
| 複数名での作業 | ◎ | ○ | × |
| 作業性 | ◎ | ○ | △ |
| 設置及び撤去の効率 | × | △ | ◎ |
| 入居者への影響 | × | ○ | ◎ |
「安いから」「早いから」という理由だけで選んでしまうと、後から追加費用が発生するケースも少なくありません。
積み重ねた実績が導く、最良の工法判断
修繕工事の成否は、「どこを直すか」だけでなく、「どうやって直すか」 によって大きく左右されます。
足場・ゴンドラ・ブランコ工法には、それぞれ明確な長所と短所があり、建物の規模・立地・劣化状況・入居者環境を正しく把握しなければ、
「コストを抑えたつもりが、結果的に高くついた」
「工期短縮を優先した結果、仕上がりに不満が残った」といった事態にもなりかねません。
鈴与三和建物は、創業90年にわたり、数多くの建物と向き合ってきました。
その中で培われたのは、現場で起きる「実際のトラブル」や「住まい手の反応」まで踏まえた実務に基づく判断力です。
だからこそ私たちは、工法の選択を、施工側の都合ではなく、建物の将来価値を最大化するという視点から見極めています。
修繕計画をご検討中のオーナー様を対象に、建物の現状を把握するための建物簡易診断を無料で実施しています。
※修繕工事のお見積りをご依頼いただくことを前提とした診断となります。
「どの工法が適しているのか分からない」
「まずは現状を把握したうえで判断したい」
といった段階でも構いません。
今の修繕が、10年後・20年後の資産価値につながるかどうか。
その視点で工法選びをお考えの方は、ぜひ一度鈴与三和建物株式会社までご相談ください。


