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老朽化マンションは「大規模修繕」か「建て替え」か?──土地活用の視点で考える、最適な判断基準──

2025.11.19 UP

■ 老朽化マンションと「選択の時代」

築40年を超えるマンションが急増し、多くの不動産所有者様が「大規模修繕で延命するか」「建て替えるか」という分岐点に直面しています。
近年の建築費上昇は、オーナーや事業者にとって大きな課題です。

大規模修繕であれば、テナントを退去させずに建物の寿命を延ばすことが可能です。
一方で、建て替えとなると入居者退去・解体・新築費用など、数億円単位の投資が必要になります。
本コラムでは、「土地活用」という視点から、大規模修繕と建て替えの判断基準や資産価値への影響を整理します。

国土交通省「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」


■ 修繕と建て替えの“境界線”をどう見極めるか

① 修繕で済むケース ― 外壁・防水工事などで対応可能な場合

まずは建物診断を実施し、構造体が健全であるかを確認します。
主要な劣化が見られない場合は、外壁補修・防水更新・設備改修などによって10〜15年程度の延命効果を見込むことができます。

また、テナントを退去させずに作業できるケースも多く、収益を維持しながら延命できる点が大きなメリットです。定期的な修繕計画を立てることで、資産価値を安定的に保つことができます。


② 建て替えを検討すべきケース ― 構造体の劣化や旧耐震基準の建物

一方で、1981年5月31日以前に竣工した旧耐震基準の建物や、構造体に明確な損傷が確認された場合は、建て替えを検討する必要があります。

耐震補強などの改修工事を行うと、改修費用が建替費用の3〜4割に達することもあり、
長期的な安全性・維持コストの観点から、建て替えのほうが合理的となる場合があります。

また、再建築により容積率の有効活用や間取りの最適化が可能です。
その結果、収益性が2倍以上向上するケースも存在します。

ただし、入居者退去・解体・仮設・建築費など、総額で数億円規模の資金が必要となるため、慎重な金融計画と長期収支シミュレーションが不可欠です。

■ 判定の基準

建築確認申請日適用基準説明
1981年(昭和56年)5月31日以前旧耐震基準改正前の基準が適用される。
竣工が1982年以降でも旧耐震扱い。
1981年(昭和56年) 6月1日以降 新耐震基準改正後の基準が適用される。
確認申請がこの日以降なら新耐震扱い。

■ 具体例

建築確認申請日竣工日適用基準
Aビル1981年4月20日1982年7月旧耐震基準
Bマンション1981年6月15日1983年3月新耐震基準

国土交通省:建替えか修繕・改修かの判断(PDF)


③ 大規模修繕費と資産価値の関係 ― 「延命投資」と「資産再構築」

老朽化した建物をどう活かすかは、土地活用における大きな分岐点です。

大規模修繕は「今ある資産を維持し、寿命を延ばすための投資」、建て替えは「老朽化した資産を再構築するための投資」と位置づけられます。

どちらを選ぶかは、建物の健康状態・築年数・将来の維持管理費などを総合的に比較し、長期的な資産保全と収益の安定性という観点から判断することが重要です。

観点大規模修繕建て替え
投資目的資産の延命資産の再構築
メリットテナント退去不要・安定収益維持収益性・耐震性・資産価値の向上
負担定期的な修繕費・再劣化リスク解体費・仮設費・高額建築費
投資回収短、中期間での回収長期間での回収

大規模修繕は「延命投資」、建て替えは「資産再構築」と捉えることで、単なる工事判断ではなく、資産戦略としての再投資判断が明確になります。

修繕によって得られる効果(賃料上昇・空室改善・維持費削減など)を考慮すると、短、中期的には十分に投資回収が見込めるケースが一般的です。

一方で、建て替えは長期的な視点での資産価値向上を狙う「再構築型の投資」といえます。
それぞれの特性を理解し、築年数・劣化状況・将来の市場価値を見極めながら、どのタイミングで再投資を行うか、それが土地活用の成否を左右します。


④ 判断のための診断基準 ― 「感覚」ではなく「数値」で判断

判断の第一歩は、客観的な劣化診断・構造検査です。
国土交通省「既存建築物の劣化診断ガイドライン」などを参考に、以下の項目を総合的に確認します。

・構造安全性(耐震性・基礎の健全性)
・外装劣化(タイル・防水・シーリングなど)
・設備更新周期(給排水・電気・空調など)
・適法性(容積率・避難経路・用途変更の可否)

大規模修繕・建替えいずれにしても、構造安全性の確保が最優先です。
現況を正確に把握し、データに基づいた判断を行うことで、
「大規模修繕で延命できるか」「建て替えが妥当か」の明確な線引きが可能となります。

既存建築物の現況調査ガイドライン


結論:資産を「守る」か「再構築」するか

大規模修繕は「今の収益を守る」選択。
建て替えは「将来の収益を創る」選択。

どちらが正しいかは、建物の健康状態と資産の将来価値で決まります。
現況調査・収支シミュレーションを踏まえ、再投資のタイミングを見極めることが、土地活用の成功につながります。

鈴与三和建物では、大規模修繕・建替えの両面から土地活用を設計し、最適な再生プランをご提案しています。


私たち鈴与三和建物株式会社は創業以来90年間、お客様の不動産に関するお悩みやご検討事を解決するお手伝いをしてきました。

その中で培った経験やノウハウを基に、お客様のご所有する不動産の現状把握等、調査やコンサルティング業務も行っております。

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