大規模修繕工事の見積比較で迷わないために|積算方法の基本と業者選びの重要ポイント
2026.02.17 UP
Contents
【はじめに】
大規模修繕工事の見積を複数社から取得すると、
「同じ建物・同じ修繕内容のはずなのに、なぜここまで金額が違うのか」と疑問に感じるオーナー様は
少なくありません。
安い業者を選んでよいのか、それとも高額な方が安心なのか。
こうした判断を金額だけで行ってしまうと、思わぬ追加費用や品質トラブルにつながる可能性も
あります。
実は、見積金額の差の多くは「積算方法の違い」によって生じています。
本記事では、大規模修繕工事における積算の基本的な考え方と、見積比較で必ず確認すべきポイントを
わかりやすく解説します。

【そもそも「積算」とは何か】
積算とは、工事内容を細かな作業単位に分解し、「どの工事を」「どの範囲まで」「どの数量で」「どの単価で」実施するかを一つずつ算出し、総工事費を積み上げていく作業です。
例えば外壁補修工事一つでも、クラック補修、タイル浮き補修、下地補修など、それぞれをどの程度の割合で見込むかによって、工事費は大きく変わります。
つまり、見積金額の違いは「工事項目の内容」と「数量の考え方」の違いから生まれているのです。

【なぜ会社ごとに積算方法が違うのか】
■ 劣化状況の見立て方と補修範囲の考え方
積算の前提となるのが、建物の劣化状況をどのように把握するかという考え方です。
劣化状況の把握方法には、打診調査や赤外線調査などの詳細調査を行う方法もありますが、修繕工事の
実施が明らかに必要な時期においては、見積段階から詳細調査に多くの費用をかけることが必ずしも
合理的とは限りません。
実務上は、まず目視を中心とした現地確認により、建物全体の状態や劣化の傾向を把握し、
その結果をもとに修繕内容や補修範囲を見立てて積算を行うケースが一般的です。
工事を実施する前提であれば、詳細な劣化状況の把握は、工事着手後に改めて全体調査を行うことを想定している場合も多く見られます。
このため、見積段階で設定される補修数量は、あくまで現地状況を踏まえた見立てであり、予測的な要素を含むものとなります。
会社ごとに補修範囲や数量の考え方が異なるのは、どの段階で、どこまでを見積に反映させるかという
判断基準の違いによるものであり、これが積算金額の差として表れる要因の一つとなっています。

■ 工法・材料選定の違い
同じ補修内容であっても、採用する工法や材料によって工事費は大きく異なります。
大規模修繕工事は一般的に次回工事までの周期を約15年程度と想定して計画されることが多く、
その期間をどのような状態で維持したいかによって、適切な仕様は変わってきます。
初期費用を抑えることを優先する仕様もあれば、次回の大規模修繕まで安定した性能を維持することを
重視し、耐久性やメンテナンス性を考慮した仕様を選択するケースもあります。
そのため、工事費の差は単なる価格差ではなく、どの程度の耐久性・維持水準を想定しているかの違い
が反映された結果 と言えます。
長期的な維持管理コストや次回修繕時の負担まで含めて考えると、単純な金額比較だけでは適切な判断が難しい部分でもあります。
■ 共通仮設費・現場管理費の違い
足場や養生などの仮設工事に加え、現場の安全管理や工程管理を行うための管理体制も積算に
含まれます。
現場管理については、常に現場に人員を配置する常駐管理を採用するケースもあれば、工程や作業内容に応じて現場を巡回し管理する巡回管理を基本とするケースもあります。
一般的に、常駐管理は管理体制が手厚くなる分コストは高くなりますが、すべての物件において常駐が
最適とは限りません。
建物規模や工事内容、周辺環境などを踏まえ、巡回管理を中心としつつ、必要に応じて管理体制を強化するなど、物件ごとに適切な管理方法を選択することが、品質とコストのバランスを取るうえで重要となります。 そのため、管理体制の考え方の違いが、共通仮設費・現場管理費の金額差として表れるケースも少なくありません。

【大規模修繕で「安い見積」に注意すべき理由】
大規模修繕工事では、タイル補修や下地補修などの数量を、事前に確定した数値として算出することは
難しく、想定数量をもとに見積を行うのが一般的です。
想定数量は、目視調査などを通じた各社の経験値による見立てであり、明確な根拠をもって正確に
算出できるものではありません。
そのため、実数精算を前提とした場合であっても、数量のブレ自体を完全に防ぐことは困難です。
こうした前提がある中で、見積金額が極端に低い場合は、補修数量が過度に少なく見込まれていないかに注意する必要があります。工事が進む中で実際の劣化が想定を上回れば、追加工事として費用が発生するケースも少なくありません。
一方で、過度に多くの数量を見込めば、初期の見積金額は高額になります。
重要なのは数量の「正確さ」を求めることではなく、各社がどのような考え方や基準で数量を見立てているのかを把握し、過度に少なく見込まれていないかという視点で、数量の違いを比較することです。
大規模修繕工事では、タイル補修や下地補修などの数量を、事前調査の結果をもとに「想定数量」として見込んで積算するケースが一般的です。
【見積比較で必ず確認したいポイント】
① 劣化診断の方法と調査範囲
どのような調査を行い、どの範囲の劣化を把握した上で工事内容を決めているのか。
どのような見立てや基準で工事内容や補修範囲を設定しているのかが説明されているかを確認することが重要です。
② 工事項目ごとの数量が明示されているか
見積書に「一式」とだけ記載されている項目が多い場合、どの範囲までの作業が含まれているのかが不明確になりやすく、工事内容の比較が難しくなります。
また、工事途中で「当初想定していなかった範囲は別途工事」と判断され、追加費用が発生するなど、後々の認識違いによるトラブルにつながるケースも見られます。
可能な限り、工事項目ごとに数量や施工範囲が具体的に記載されているかを確認し、何が含まれていて、何が含まれていないのかを事前に把握しておくことが重要です。
③ 工法・材料の選定理由が説明されているか
大規模修繕工事では、基本的な工法や使用する材料について、一定の標準仕様に基づいて提案されるのが一般的です。一方で、会社によっては耐久性やメンテナンス性を考慮し、よりグレードの高い材料や仕様を提案するケースもあります。
そのため、見積を比較した際に、同じ工事項目で単価に大きな差がある場合は、その理由を確認することが重要です。
④ 共通仮設費・管理費の内訳が妥当か
安全対策や管理体制が適切に計画されているかも、施工品質を左右する重要なポイントです。
これらを確認することで、単なる価格比較ではなく「内容比較」ができるようになります。
【結論|積算方法を知ることが後悔しない修繕につながる】
大規模修繕工事の見積金額に差が出るのは、積算方法や修繕方針、管理体制の考え方といった、各社の取り組み姿勢の違いが反映された結果です。
そのため、金額の大小だけで判断するのではなく、どのような調査を行い、どのような考え方で工事内容や数量、仕様が設定されているのかを理解したうえで比較することが重要です。
鈴与三和建物では、まず目視を中心とした現地確認を行い、建物全体の状況を把握したうえで、過不足のない修繕内容と現実的な管理体制を前提とした積算を行うことを重視しています。
必要以上に工事規模を大きくするのではなく、建物ごとの条件に応じた合理的な修繕計画を立てることで、長期的な資産価値の維持につながるご提案を心がけています。
将来の修繕計画まで見据え、納得感のある説明のもとで進める修繕こそが後悔のない大規模修繕につながります。
その第一歩として、見積内容や積算の考え方について、気になる点があればお気軽にご相談下さい。


