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賃貸マンション建築の基本知識|建てる前に押さえておきたい5つの視点

2025.12.08 UP

賃貸マンションの建築は、「土地があるから建てる」「収益性が高いから始めてみる」という理由だけでは成功しにくい分野です。

新たな建築を計画すること自体は一見シンプルですが、目的・構造・費用・間取り・将来運営といった複数の要素が絡み合うため、最初の判断を誤ると後から調整が難しくなります。

特に近年は建築費の高騰や人口動態の変化など、賃貸市場を取り巻く環境が大きく変わりつつあり、以前よりも“計画段階の質”が成果を左右するようになりました。

このコラムでは、土地活用を検討するオーナーの方はもちろん、これから賃貸マンション建築の基礎を学びたい方にも向けて、建てる前に必ず知っておきたい基本ポイントを分かりやすく整理してご紹介します。


1. まずは「建てる目的」を明確にする

賃貸マンション建築の第一歩は、目的をはっきりさせることです。目的が曖昧なまま進めると、建物の構造・戸数・仕様の判断が一貫しなくなり、結果として収益性が不安定になるケースも少なくありません。

目的の例としては、以下のようなものがあります。

・安定的な家賃収入を得たい
・相続税対策として資産価値の高い建物を持ちたい
・遊休地を無駄なく活用したい
・会社の資産運用として長期的に保有したい

目的が変われば、建物のつくり方も変わります。
たとえば、相続税対策目的であれば耐久性の高いRC造、短期回収を考えるなら単身者向けのコンパクトな建物が適しているなど、判断基準が大きく異なります。


2. 建物の構造を理解する|費用・耐久性・用途が変わる重要ポイント

賃貸マンションの構造には大きく分けて「木造」「鉄骨造」「RC造」の3種類があります。
構造の違いは、建築費・耐久性・遮音性・建てられる階数・将来の修繕費にも影響するため、基礎的な理解が欠かせません。

以下に、構造ごとの特徴を分かりやすくまとめました。

◇建物構造の比較表

構造建築費耐久性遮音性規模の目安特徴
木造低い普通低め低層初期費用を抑えたい方向け。建築スピードが早い。
鉄骨造(S造)良い普通中層コストと性能のバランスが良い。中層マンションに多い。
RC高い非常に良い高い中高層断熱・遮音・耐久性に優れ、資産価値が高い。

構造選びで重要なのは、目的・予算・土地条件との相性です。敷地条件や求める仕様によって、適した構造が異なる為、それぞれの特徴を踏まえて最適な構造を検討することが大切です。


3. 建築費の“正しい理解”|坪単価だけでは全体がつかめない理由

建築費と聞くと、「坪単価 × 延床面積」で総額が計算できると考えられがちです。しかし、この式で算出できるのはあくまで 建物本体の工事費 に過ぎません。実際に必要となる総額は、これ以外にも多くの費用が加わるため、坪単価だけで全体像を把握することはできません。

とくにマンション建築では、デザイン・構造・設備仕様の違いによって本体工事費が大きく変動するため、坪単価はあくまで 目安 として利用するのが適切です。

実際の建築総額は、以下のような 附帯工事費や諸経費 を加えた金額で決まります。

・地盤調査・地盤改良費
・外構工事費(駐車場・アプローチ・フェンス等)
・外部給排水工事
・各種申請手続き費用(確認申請など)
・諸経費(仮設工事、保険、近隣対応費など)

これらはすべて建物本体とは別途発生する費用であり、
「本体工事費+附帯工事費+諸経費」=実際に必要となる建築総額
という構造を正しく理解しておくことが重要です。

さらに近年は、資材価格の高騰や技能労働者の不足により、建築費そのものが上昇傾向にあります。
そのため、計画の初期段階から 「総額でいくら必要になるのか」 を正確に把握しておくことが、予算管理の成否を大きく左右します。


4. 入居者に選ばれる“間取りと設備”を考える

賃貸マンションの競争力を左右するのが、間取りと設備です。
入居者が「住みたい」と思える設計ができれば、空室リスクを大幅に下げることができます。

◇間取りの方向性
・駅徒歩5分以内(都心~準都心)は単身者向け中心で構成。回転率が高く、空室対策として人気設備を優先(宅配BOX・高速ネットなど)

・駅徒歩6〜12分・住宅街エリアは単身+カップル向けのミックス型で構成。
DINKS・新婚層を狙うことで家賃単価を確保し駐輪場・収納力が競争力に直結させる。

・郊外・ファミリー層が多い学区エリアはファミリー向けを軸に構成。
駐車場をセットで計画すると成約率が大幅に向上。学校・公園アクセスが強いエリアは長期入居が期待できる。

◇ 設備の基本ライン
・宅配ボックス
・インターネット無料
・防犯カメラ
・オートロック
・浴室乾燥機
・全部屋エアコン設置済
・エレベーター(中層以上)

入居者層のニーズを理解し、設備投資のバランスを整えることで、将来の収益性が安定します。


5. 建物竣工後の管理・修繕を理解する|“外装修繕”は必ず発生する

建物は完成して終わりではありません。
むしろ、完成後の管理とメンテナンスこそが建物の価値を左右します。

毎年かかる費用の例:
・管理費(清掃、点検、巡回)
・税金(固定資産税・都市計画税)
・設備の更新費用(エレベーター・消火設備等)
・共用部の電気水道代や保険料

そして忘れてはならないのが、外装修繕です。
外壁タイル、屋上防水、鉄部塗装などは、10〜15年ごとに大きな工事が必要になります。

外装修繕を適切に行うことで、
・建物の寿命が延びる
・入居者満足度が上がる
・将来の資産価値が保たれる

というメリットがあり、長期運用には欠かせない要素です。


結 論

賃貸マンションの建築で大切なのは、「建てるプロセス」だけが重要なのではありません。
目的、建物計画、費用、収益、そして建てた後の管理までを総合的に考えることが、長期的に価値ある資産へと育てるポイントです。

建てる前に…

・「何のために建てるのか」→目的によって、構造・戸数・投資額・事業期間がまったく変わるため、
最初に方向性を固定することが重要です。

・「どんな建物にしたいのか」→ここが曖昧だと、「とりあえず作った」だけの物件になり、空室リスクが高まります。

・「費用と収益のバランスは取れるか」→事業として成立しない計画は、どれだけ良い建物でも成功しません。

以上を整理するだけで、計画の精度は大きく変わります。

鈴与三和建物では、建築計画から収支シミュレーション、完成後の管理まで、ワンストップでサポートしています。
初めての方でも安心して検討できるよう、分かりやすく丁寧にご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

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