マンション建築費・空室・将来修繕から考えるフルボリューム or ミニマムボリューム判断と後悔しない土地活用とは
2026.02.25 UP
Contents
■ はじめに
私たち鈴与三和建物株式会社は、創業以来90年にわたり、お客様の不動産に関するお悩みや
ご検討事項に向き合い続けてまいりました。
土地活用、建替え、大規模修繕、売却、相続対策など、不動産を取り巻く課題は時代とともに
変化しています。
その中で培ってきた経験と実務ノウハウをもとに、現在では不動産の現状把握や各種調査、
コンサルティング業務まで幅広く対応しております。
本コラムでは、これまでの実務で得た知見をもとに、不動産活用に役立つ考え方や判断のポイントを
分かりやすく整理してお伝えしていきます。
不動産に関するお悩みやご検討事項がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
① 「最大限建てる=最適解」とは限らない
土地活用や賃貸マンション・ビルの建築計画では、
「この土地にどこまで建てられるか(フルボリューム)」が最初に検討されるケースが多くあります。
しかし近年は、
・ 建築費の高騰
・ 金利上昇リスク
・ 空室率の地域差拡大
・ 将来の修繕費増大
といった要因により、最大規模で建てることが必ずしも最適とは言えない時代になっています。
本コラムでは、建築費・空室リスク・将来修繕という3つの視点から、
「フルボリュームで建てるべき土地」と「ミニマム(抑え)ボリュームが適する土地」の考え方を
整理します。

②フルボリュームとは?ミニマムボリュームとは?
②―① フルボリュームの仕組み
フルボリュームとは、敷地条件に対し容積率・建ぺい率を最大限まで使い切って建築する考え方です。
延床面積と戸数をできるだけ多く確保することで、表面的には家賃収入の総額を最大化しやすい点が
特徴です。
・ 容積率・建ぺい率を最大限使って建築
・ 戸数・延床面積を最大化
一方で、規模が大きくなる分、
・ 建築費が高額になりやすい
・ 借入金額が増え、返済期間も長期化しやすい
・ 金利上昇や追加工事が発生した際の影響が大きい
といった側面も持ち合わせています。
また、戸数を優先するあまり、間取りや設備が「周辺相場の平均レベル」に寄りやすく、
空室対策が家賃調整頼みになりやすい建物になるリスクもあります。
フルボリュームは立地の賃貸需要が強く、将来にわたって高い稼働率が見込める土地では有効ですが、
収入が少しでも想定を下回ると負担が一気に重くなる点には注意が必要です。
②―②ミニマムボリューム(抑えボリューム)の仕組み
ミニマムボリューム(抑えボリューム)とは、「建てられる最大規模」ではなく、
無理なく持ち続けられる規模を基準に建築する考え方です。
あえて戸数や延床面積を抑えることで、
・ 1戸あたりの専有面積を広く取る
・ 戸数を絞り、1戸あたりの質を高める
・ 初期投資・修繕負担をコントロール
・収納量や設備仕様を充実させる
・ 入居者ターゲットを明確にした設計がしやすい
といったメリットが生まれます。
初期投資や借入額を抑えやすいため、
・建築費の上振れリスク
・空室発生時のキャッシュフロー悪化
・将来の修繕費負担
をコントロールしやすい点も大きな特徴です。
特に将来の大規模修繕では、外壁面積や設備点数が少ない分、修繕費が読みやすく、資金計画を
立てやすい傾向があります。
ミニマムボリュームは、「短期的な収益最大化」よりも、長期的に安定した運用と出口の柔軟性を重視
した戦略と言えます。

➂ 建築費は「回収できる規模か」で考える
フルボリュームは戸数が増えるため、表面的には家賃収入の総額が大きくなります。
しかしその分、建築費や借入金額も大きくなり、金利負担や追加工事が発生した際の影響も比例して
増加します。
重要なのは「最大まで建てられるか」ではなく、その規模の建築費を将来にわたって無理なく
回収できるかという視点です。
例えば、家賃が想定より下がった場合でも返済が続けられるか、建築費が想定より上振れしても
事業として成立するかを事前に確認する必要があります。
満室・想定家賃が前提でしか成立しない計画は、少しの環境変化で崩れる可能性が高いため、余力を
残した規模かどうかが判断のポイントになります。
※チェックポイント
・ 家賃が想定よりも下がっても返済できるか
・ 建築費が想定よりも上振れしても成立するか
・ 金利負担が想定よりも上がった場合も運営できるか
・ 追加工事リスクも事前に把握しているか
「満室・想定家賃前提」でしか成り立たない規模は危険です。

④ 空室は「戸数」ではなく「競争力」で決まる
よくある誤解として「戸数が多ければリスクが分散されて安全」という考え方があります。
しかし実際の賃貸経営では、戸数の多さよりもその建物がどれだけ選ばれるかが空室率を左右します。
空室の発生を左右するのは、
・ 立地条件
・ 間取りの使いやすさ
・ 設備のグレード
・ 収納量や室内のゆとり
・ 外観や共用部を含めたデザイン
といった商品力が空室率を左右します。
フルボリュームを優先した結果、戸数確保のために間取りが画一的になり設備も最低限にとどまると、
周辺物件との差別化ができず、入居付けのために家賃を下げ続ける建物になりやすくなります。
間取りが画一的で
・ 設備が最低限
・ 周辺物件と差別化できない
という建物になると、家賃を下げないと埋まらない建物になります。
重要なのは戸数を増やすことではなく、 このエリアで選ばれる理由を持った建物かどうか
という視点です。

⑤ ミニマムボリュームは「質で勝つ」戦略
ミニマムボリュームとは、戸数をできるだけ多く確保するのではなく、1戸あたりの質を高めることを
優先する考え方です。
戸数を抑えることで、
・ 専有面積をやや広く取る
・ 大型収納やウォークインクローゼットを設ける
・ 在宅ワークを想定したワークスペースを確保する
・ キッチン、水回り、空調などの設備グレードを上げる
といった、入居者が「住みたい」と感じる要素を盛り込みやすくなります。
1戸あたりの魅力を高める設計が可能になります。
このような建物は、周辺物件との明確な差別化ができるため、空室が出ても早期に次の入居者が
決まりやすく、家賃を大きく下げずに運用しやすいという特徴があります。
結果として、
・ 空室期間の短縮
・ 家賃下落の強い耐性
・ 入居者の定着率の向上につながる
といった長期的に安定した賃貸経営を目指す戦略となります。

⑥ 将来修繕費の「建てた瞬間に決まる」とだ規模修繕時に
「その時の収入」で払えるか
⑥―① 将来修繕費の「建てた瞬間にきまる」
将来発生する修繕費の総額は、実は建物を建てた時点でほぼ方向性が決まります。
その金額を左右するのが、
・ 外壁や屋上の面積
・ 設置する設備の点数(給湯器・エアコン・ポンプなど)
・ 廊下・階段・エントランスなど共用部の広さ
といった要素です。
フルボリュームで建てるほど、修繕対象となる面積や設備数も増えるため、将来の修繕費も比例して
大きくなる傾向があります。建築時には見えにくいコストですが、この段階で規模をどう設定する
かが、10年後・20年後の負担を大きく左右します。
⑥―② 大規模修繕時に「その時の収入」で費用を払えるか
15~20年後の大規模修繕では、建物規模によっては数千万円単位の支出が発生することも
珍しくありません。
重要なのは、その時点の賃料収入だけで、無理なく修繕費を賄える規模かどうかという視点です。
具体的には、
・ 借入返済
・ 修繕積立
・ 日常の運転資金
を同時に支払いながらも、資金繰りが回るかを事前にシミュレーションすることが欠かせません。
修繕のたびに追加借入が必要になる計画では、長期的に安定した運用は難しくなります。

⑦ フル、ミニマムの将来出口(売却・建替え・相続)まで
含めて考える。
将来、物件を売却する場合、過度に規模の大きい建物は取得価格が高くなりやすく、
結果として購入できる投資家層が限られるという側面があります。
⑦―① フルボリュームの出口戦略
法人や一部の大口投資家にしか検討されにくく、市況によっては売却に時間がかかる
可能性もあります。
また建替えや相続を想定した場合でも、建物規模が大きいほど解体費や次の事業計画の負担が
重くなり、判断の自由度が下がるケースがあります。
・ 売却
・ 建替え
・ 相続
を想定した場合、過度に大きな建物は買い手が限定されやすいという側面があります。
⑦―② ミニマムボリュームの出口戦略
ミニマムボリュームは、建物規模を抑えることで取得価格をコントロールしやすく、
個人投資家や小規模事業者でも検討しやすい物件になりやすい点が特徴です。
その結果、将来売却する際にも買い手の幅が広がり、売却・建替え・相続といった
複数の選択肢を残しやすくなります。
環境や市況が変化した場合でも、方向転換しやすい余地を持った建築計画にしておくことが、
長期的に安心できるボリュームの考え方と言えるでしょう。
・ 取得価格を抑えやすい
・ 小規模投資家にも売却しやすい
など、出口の選択肢を残しやすいメリットがあります。

⑧ 建築計画をする土地について
⑧―① フルボリュームが向く土地
フルボリュームが向いているのは、 賃貸需要が非常に強く、供給が増えても一定の家賃水準を維持
できるエリアです。
具体的には、駅から近い立地や商業地など、 常に一定数の入居希望者が見込めるエリアでは、
戸数を増やすことで収益性を高めやすい傾向があります。
また、高家賃帯での賃貸が成立する土地であれば、建築費や借入負担が大きくなっても回収の見通しが
立てやすく、 長期保有を前提とした運用であればフルボリュームが有効な選択肢になります。
・ 駅近・商業地など賃貸需要が極めて強い
・ 高家賃が見込める
・ 長期保有前提
⑧-② ミニマムボリュームが向く土地
一方、ミニマムボリュームが向いているのは、 落ち着いた住宅地など、
家賃相場が大きく伸びにくいエリアです。
このような土地では、戸数を増やしても家賃を上げにくく、
フルボリュームにすることで空室や価格競争のリスクが高まるケースがあります。
将来の売却や建替え、相続なども視野に入れる場合は、 規模を抑えることで資金負担や判断の自由度を
確保しやすく、 長期的に柔軟な運用ができる点がミニマムボリュームの強みとなります。
・ 住宅地
・ 家賃相場が伸びにくい
・ 将来売却も視野

■ まとめ
「どこまで建てられるか」より「持ち続けられるか」 建築ボリュームに万能の正解はありません。
・ 建築費
・ 空室リスク
・ 将来修繕
を同時に見たとき、 10年後・20年後も無理なく運用できる規模こそが最適解です。
短期的な利回りだけで判断せず、 長期の経営視点でボリュームを考えることが、
後悔しない土地活用につながります。

