外壁タイル補修の工法比較:樹脂注入・張替・ピンネット工法の特徴と費用
2025.10.01 UP
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はじめに
マンションやオフィスビルの外壁に使用されるタイルは、美観と耐久性を兼ね備えた仕上げ材として広く採用されています。しかし、経年劣化により下地との間に隙間が生じ、「浮き」や「剥落」といった不具合が発生することがあります。特に人通りの多い場所では、タイルの剥落が建物利用者や通行人に危険を及ぼし、重大な事故につながる可能性もあるため、注意が必要です。
このような背景から、外壁タイルの補修は建物オーナーにとって、安全性の確保と資産価値の維持の両面で重要な取り組みといえます。
従来、一般的に採用されてきた補修方法には「樹脂注入工法」と「張替工法」があります。いずれも豊富な施工実績を持ち、有効な手段とされていますが、耐久性やコスト面において課題が指摘されてきました。
近年では、これらの弱点を補い、安全性と長寿命化を両立できる「ピンネット工法」が注目を集めています。
本コラムでは、外壁タイル補修における代表的な3つの工法について比較し、それぞれの特徴や適した活用シーンを具体的に解説します。

「樹脂注入工法とは?費用・耐久性・メリットデメリット」
【特徴】
– 小規模な浮き補修や応急処置に最適。
– 長年の施工実績があり、多くの施工会社が対応可能。
– 張替、ピンネット工法と比べて比較的安価で初期費用を抑えられる。
【課題】
– 接着剤に依存するため、耐用年数は概ね10〜15年程度と限界がある。
– 温度差や湿気による下地の膨張・収縮に対応しにくく、再浮きが発生する可能性がある。
– 地震や激しい振動に弱い場合がある。


「張替工法はどんなときに有効?デザイン性とコスト面を解説」
【特徴】
– 全面張替えの場合はタイルを新規に交換するため美観を大きく改善できる。
– 部分張替ならコストを抑えて施工が可能。
【課題】
– 既存タイルと同じ柄や色の調達が難しい場合がある。
– 築年数が古い建物では色合わせができず、補修部分が目立つ可能性がある。
– 全面張替は工期・費用ともに大きな負担となる。


「ピンネット工法の特徴|耐震性・安全性で注目される理由」
【特徴】
– 浮き部にピンを打ち込み、ネットで面状に固定。必要に応じて樹脂注入も行い、接着+機械的固定の二重補修を実現。
– 広範囲の補修や大規模修繕に適している。
【強み】
– 高い安全性:ピンとネットで物理的に固定するため、タイル剥落リスクを大幅に低減。
– 長期耐久性:半永久的に耐用が見込め、施工会社によっては長期保証も可能。
– 耐震性能:建物の揺れや地震動に強く、タイル面を「一体化したパネル」として保持。
– 景観維持:既存タイルを活かすため、外観デザインを損なわずに補修可能。
– ライフサイクルコスト削減:初期費用は高めでも、再補修の頻度が減り長期的にはコスト優位。



「3つの外壁タイル補修工法の費用・耐用年数を比較」
| 項 目 | 樹脂注入工法 | 張替工法 | ピンネット工法 |
|---|---|---|---|
| 施工実績 | 標準的 | 部分~全面張替 | 普及拡大中 |
| 安全性 | 接着依存で再劣化リスクあり | 新規タイルで安全性回復 | 二重固定で剥落防止性能が高い |
| 耐久性 | 10〜15年程度 | 部分は限定的、全面は長期的 | 半永久的 |
| 景 観 | 既存タイルを活かす | 全面張替えで美観改善 | 新しい仕上げ材で外観一新可能 |
| コスト | 低コスト | 高額 | 初期費用は高いが長期的に有利 |
| 適用場面 | 小規模補修・応急処置 | 美観重視や破損部対応 | 大規模修繕・長寿命化案件 |
活用シーンの違い
【樹脂注入工法が有効なケース】
– 外壁の一部に浮きが発生しているが、全面修繕の必要がない場合。
– 予算が限られており、短期的に安全を確保したいケース。
– 将来的に建替えや大規模修繕を予定しており、それまでの応急処置として。
【張替工法が有効なケース】
– タイルの破損や剥落が進み、接着補修だけでは対応できない場合。
– 建物の耐久性・安全性を向上させたい場合。
– 外観デザインを刷新したい場合。
【ピンネット工法が有効なケース】
– 人通りの多い立地で、剥落事故を徹底的に防止したい場合。
– 今後も長期的に保有・運用を継続する場合。
– 大規模修繕のタイミングで、耐震性・安全性・長寿命化を同時に実現したい場合。
– 初期費用よりも長期的な維持管理コスト削減を重視する場合。
まとめ
外壁タイル補修には「樹脂注入工法」「張替工法」「ピンネット工法」という3つの選択肢があります。
– 樹脂注入工法はコストを抑えた小規模補修に有効だが、耐久性に課題。
– 張替工法は美観を重視した補修に向き、建物の意匠性を高めながら、老朽化した外壁の機能回復と安全性の向上を同時に図ることができます。
– ピンネット工法は初期投資が高いものの、安全性・耐久性・耐震性に優れ、長期保有を前提とする建物に最適。
建物オーナーは、建物の用途、立地条件、予算、そして長期的な管理方針を踏まえ、最適な工法を選択することが重要です。外壁修繕を適切に実施することは、資産価値の維持だけでなく、利用者や周辺の方々の安全を守るための責務でもあります。
こうした外壁補修に関するご相談は、創業90年を誇る鈴与三和建物株式会社までお気軽にお寄せください。豊富な経験と確かな技術で、建物の価値と安全性を守る最適なご提案をいたします。
弊社ピンネット工法施工事例

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