法人が知っておくべき老朽不動産活用の選択肢とは?
2025.05.09 UP
築年数が経過した建物を抱える法人は年々増えています。とくに都市部では1970〜80年代に建てられたオフィスビルやマンション、工場や倉庫などが築40年以上となり、耐震性・設備の老朽化といった課題を抱える建物も増えています。
老朽化のリスクは様々ですが、法人にとってはBCP(災害や事故が発生した際に事業の継続や早期復旧を行う為の計画)の観点でも老朽化は大きなリスクとなります。
一昔前までは「老朽化=建替え」が主流でしたが、建設費の高騰や人口減少、働き方の変化などを背景に、“建替え一択”の時代は終わりを迎えています。
本記事では、建替えをはじめとして、老朽不動産活用の選択肢を整理し、それぞれの特徴とメリット・デメリットを法人目線でご紹介します。
>>関連コラム:土地活用を行ううえで注意したい「地震のリスク」を解説
Contents
不動産活用の選択肢:建替え

建替えは、老朽建物の価値を根本から見直し、再投資によって資産を再構築する選択肢です。
最新の設備や耐震性を確保することで、収益物件であれば建物の競争力を大幅に高められます。自社利用物件であれば労働環境の改善や生産性の向上などにつながります。
建替えのメリット
- ・土地の特性を最大限に生かし、需要を捉えた建築を行うことで資産価値を最大化できる
- ・最新設備の導入による生産性の向上や、災害リスクの低減が可能
- ・法人の認知度向上やイメージアップなどブランディング効果が期待できる
建替えのデメリット
- ・初期投資額が大きくなる
- ・計画開始から完成までに時間と労力がかかる
- ・建築に伴い仮移転や業務停止、収益が得られない期間などが発生する場合がある
これらのことを踏まえ、以下のような場合は建替えを検討してみても良いかもしれません。
- ・その建物が自社で長期間保有する方針となっている
- ・財務的に建替えの余力がある
- ・建物の劣化がひどく、修繕などでの改善が見込めない
- ・本社屋や目抜き通りの建物など企業の顔となる不動産
>>関連コラム:【土地活用の事例紹介】老朽化に伴うマンションの建て替え│2つの事例から学ぶ
不動産活用の選択肢:売却

↑図は修正案の文章に合わせて訂正します。
老朽した建物が「今後使う予定がない」「維持管理コストがかさんでいる」「再投資の余力がない」などの場合、売却は有効な手段です。
売却のメリット
- ・不動産を現金化することで資産の流動化を図れる
- ・維持管理コストの削減や老朽リスクを回避できる
- ・財務体質の改善につながる可能性がある
- ・建替えと比べ短期的に活用ができる
売却のデメリット
- ・短期的に大きな利益が発生する場合もあり税制面などで注意が必要
- ・売却後の再取得が困難
- ・自社利用の場合は移転先の確保が必要
- ・買い手や売却条件などによって金額が大きく変動する可能性がある
以下のような場合は売却も選択肢の一つとして検討してみても良いかもしれません。
- ・遊休不動産で今後も活用の予定がない
- ・建替えや修繕にかかるコストに見合わない不動産
- ・本業でのキャッシュフローの改善を早急に行わなければならない
>>関連コラム:企業が土地活用を取り入れるべき理由とは?収益率向上やリスク軽減など5つの視点を解説
不動産活用の選択肢:大規模修繕

建替えや売却が難しい場合、大規模修繕は現実的な選択肢となります。外壁や屋上防水、設備機器など、老朽化が進んだ部分を中心に修繕することで、安全性や快適性を一定レベルまで回復できます。
大規模修繕のメリット
- ・建替えと比べコストを抑え、工期を短縮できる
- ・自社利用や賃貸など、使用を継続しながら改善ができる
- ・建物の寿命を延ばすことができる
大規模修繕のデメリット
- ・将来的には建替えをしなければならない場合が多い
- ・劣化の箇所や程度によっては工事が難しい場合がある
- ・費用対効果の計算がしづらい
- ・騒音や臭い等、自社や入居者への悪影響が発生する場合がある
これらを踏まえ以下のような場合は大規模修繕の検討をおすすめします。
- ・建替えや売却の意思はあるが当面は保有しなければならない
- ・移転先や立ち退きの点で建物の使用を継続したい
- ・コストを抑えながら建物を活用したい
>>関連コラム:大規模な修繕工事を実施するまえに考えるべきこと
各選択肢の比較と判断軸
どの選択肢が最適かは、企業の経営方針や保有目的によって異なります。以下の比較表を参考に、自社にとっての判断軸を明確にすることが重要です。
各選択肢の特徴
項目 | 建て替え | 売却 | 大規模修繕 |
---|---|---|---|
コスト | 高い | 手数料程度 | 中程度 |
収益性 | 向上する | 現金化可能 継続収入はなくなる | 維持できる |
リスク | 根本的に解消 | リスクを手放せる | リスクを抑制できるが限定的 |
期間 | 解体~建築で2年以上 | 買い手が決まればすぐ | 数ヶ月~半年 |
検討の判断軸
判断軸 | 建て替え | 売却 | 大規模修繕 |
---|---|---|---|
資金の有無 | 多額の初期投資が必要 | 即現金化でき初期投資は不要 | 建替えと比べ低コスト |
移転先の有無 | 自社の一時移転、テナントの立ち退きが必要 | 自社の移転・テナントの立ち退き先が必要 | 自社・テナントの営業継続が可能 |
今後の方針 | 長期的な所有・運用が適している | 固定資産を流動化したい | 短期~中期的に保有を継続したい |
まとめ
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老朽化した建物をどう扱うかは、単なる不動産管理の話にとどまらず、企業の経営戦略に大きく関わるテーマです。
「建て替えればいい」という時代は終わり、多様な活用策を理解し、自社にとって最適な道を選ぶことが求められています。
不動産の活用は“資産の眠り”を“事業の力”へと変えるチャンスです。今ある建物をどう動かすか――この機会にぜひ一度、戦略的な見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
私たち鈴与三和建物株式会社は創業以来90年間、ビルやマンションの「建替え」「売却」「大規模修繕」などを総合的にお手伝いしてきました。
その中で培った経験や知識、技術を基に不動産の老朽化に悩むお客様をサポートいたします。
ご相談は無料ですのでお悩みの方はぜひお気軽にお問合せください。